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契約解除・クーリングオフ以外の救済手段

📚 解説 | 公開日: | 最終更新:

契約をめぐるトラブルと救済手段

消費者と事業者との契約トラブルを解決する手段は、クーリングオフ以外にも、契約の取消し・解除・無効・損害賠償請求 等があります。

(1) 契約の取消し(民法)

錯誤による取消し(民法95条)

契約の重要な部分について錯誤(思い違い)があった場合、当事者は契約を取り消すことができます。ただし、錯誤が重大な事実に関するものであることが必要です。

詐欺・強迫による取消し(民法96条)

詐欺・強迫によって契約を締結した場合、当事者は契約を取り消すことができます。取消権の行使期間(除斥期間)は、追認をすることができる時から3年間、または契約締結の時から10年間です。

消費者契約法による取消し

消費者契約法は、事業者の不当な勧誘行為によって契約した場合に、消費者に契約の取消権を認めます。具体的には以下の類型があります。

  • 事業者による重要事項の不実告知(虚偽の説明)
  • 事業者の重要事項の故意の不告知(消費者が当該事実を知っていれば契約しなかった場合)
  • 事業者による不退去監禁
  • 事業者による契約締結前の威迫
  • 霊感等による知見を用いた告知(霊感商法)
  • 契約締結時に消費者保護のための必要な情報提供がない場合 等

取消権の行使期間は、追認をすることができる時から1年間(事業者による取消原因を知った時)、または契約締結の時から5年間

(2) 契約の解除

契約の解除には、以下の種類があります。

法定解除権(民法)

債務不履行(履行遅滞・履行不能・不完全履行)があった場合、債権者は契約を解除できます。

約定解除権

契約書に「○○の場合は解除できる」 等と定められた場合の解除権。

催告解除

相手方に相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がない場合に契約を解除する。

(3) 契約の無効

以下の事由に該当する場合、契約は無効となります。

  • 契約の内容が公序良俗に反する場合(例: 賭博契約 等)
  • 契約の締結が不法原因給付に該当する場合
  • 法定の方式が整っていない場合(例: 一部の上限額を超える消費貸借 等)

(4) 損害賠償請求(民法)

事業者の債務不履行・不法行為により消費者が損害を被った場合、損害賠償を請求できます。損害賠償の範囲は、通常損害(履行利益)特別損害の双方が含まれます。

(5) 不当利得返還請求(民法)

契約が無効・取消し・解除された場合、法律上の原因なくして受け取った利益の返還を求めることができます(例: 契約解除時、事業者は受け取った代金を返還する義務)。

(6) 消費者裁判手続特例法(2023年10月施行)

2023年10月から、被害にあった消費者が、事業者との間の同種の被害について、消費者団体(適格消費者団体 等)が共通争点について一括して訴えを提起できる制度が始まりました。

少額訴訟・民事調停

少額訴訟(60万円以下)

60万円以下の金銭請求については、簡易裁判所で少額訴訟を利用できます。1日で審理が終わることもあり、訴訟費用も少額で済みます。

民事調停

裁判所で、調停委員が当事者間の合意による解決を図る制度。訴訟より柔軟で、費用も少額。

クーリングオフが使えない場合の検討順序

  1. 消費者契約法に基づく取消し(不当な勧誘行為があった場合)
  2. 民法に基づく取消し(錯誤・詐欺・強迫)
  3. 契約の解除(債務不履行・約定解除権の行使)
  4. 契約の無効(公序良俗違反 等)
  5. 損害賠償請求

証拠の確保

契約トラブルになった場合、契約書・メール・SNSのやり取り・録音データ・振込明細 等が重要な証拠となります。契約時のやり取り・書面の保存を日頃から徹底しましょう。

民法に基づく契約の取消し(錯誤・詐欺・強迫)

錯誤(民法95条)

「錯誤」とは、契約締結時に当事者の認識と事実が異なることです。錯誤が重大な事実に関するものでなければ、契約の取消しは認められません。

  • 法律行為の重要な部分の錯誤: 当事者の同一性・契約の目的物の性質・数量 等
  • 意思表示の錯誤: 表意者の真意と異なる意思表示をしたこと

錯誤による取消しの行使期間は、追認をすることができる時から3年間(錯誤を知った時)、または法律行為の時から10年間です(除斥期間)。

詐欺・強迫(民法96条)

「詐欺」または「強迫」を受けて契約した場合、当事者は契約を取り消すことができます。

  • 詐欺: 事実の隠蔽・虛偽の告知 等によって、相手方を錯誤に陥れて意思表示させること
  • 強迫: 相手方やその関係者の生命・身体・自由・名誉・財産 等に対する害悪の告知によって、意思表示させること

取消権の行使期間は、追認をすることができる時から3年間(詐欺・強迫を知った時)、または契約締結の時から10年間です。

消費者契約法に基づく取消し(主な類型)

(1) 事業者の重要事項の不実告知(消費者契約法4条1項)

事業者が重要事項について事実と異なることを告げた場合、消費者は契約を取り消すことができます。重要事項とは、消費者が当該契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすものをいいます。

(2) 事業者の重要事項の故意の不告知(消費者契約法4条2項)

事業者が重要事項について故意に事実を告げなかった場合で、消費者が当該事実を知っていれば契約しなかったと合理的に考えられるときは、消費者は契約を取り消すことができます。

(3) 事業者による不退去・監禁(消費者契約法4条3項)

事業者が、消費者が退去する意思表示をした後も退去せずに勧誘を継続した場合、または消費者を物理的に監禁して勧誘した場合、消費者は契約を取り消すことができます。

(4) 霊感等による告知(消費者契約法4条4項)

事業者が、人の生命・身体・財産 等について、科学的根拠のない「霊感」等を用いた告知により、契約の締結について困惑させた場合、消費者は契約を取り消すことができます(「霊感商法」に対する規制)。

契約の解除(法定解除権)

(1) 履行遅滞による解除(民法541条)

債務者が履行期に債務を履行しない場合、債権者は相当の期間を定めて催告をし、その期間内に履行がないときは契約を解除できます。

(2) 履行不能による解除(民法543条)

債務の履行が不能になった場合、債権者は催告なしに直ちに契約を解除できます。

(3) 不完全履行・履行遅滞による損害賠償(民法415条)

債務者が債務の本旨に従った履行をしない場合、債権者は損害賠償を請求できます。

特定商取引法による中途解約(特定商取引法の特定継続的役務提供)

特定商取引法では、特定継続的役務提供契約(エステ・語学教室・家庭教師・学習塾・結婚相手紹介サービス 等)について、クーリングオフ期間(8日間)経過後でも、法定の中途解約権を認めています。

中途解約時の精算額は、提供された役務の対価 + 契約解除の損害賠償額(上限2万円または1ヶ月分相当額 等)となります。

契約の無効

契約は、以下の事由に該当する場合に無効となります。

  • 公序良俗違反(民法90条): 賭博契約・売春契約 等
  • 不法原因給付(民法708条): 不法な原因に基づく給付(賭博の賞金 等)
  • 法定の方式の不備: 一部の上限額を超える消費貸借(民法587条の2)
  • 公序良俗違反の定型約款(消費者契約法10条)

損害賠償請求(債務不履行・不法行為)

契約をめぐるトラブルでは、損害賠償請求が検討されます。

類型根拠内容
債務不履行(民法415条)契約に基づく債務が履行されない場合通常損害(履行利益)+ 特別損害
不法行為(民法709条)故意・過失による他人の権利侵害被った損害の賠償(治療費・休業損害・慰謝料 等)
製造物責任(PL法)製造物の欠陥により生命・身体・財産に損害製造物責任(無過失責任)
説明義務違反(民法1条2項・消費者契約法)事業者の説明義務違反損害の賠償

証拠の確保

契約トラブルを解決する上で、証拠の確保が最も重要です。以下のような証拠を日頃から保存・整理しておきましょう。

  • 契約書・申込書: 契約内容の証拠
  • メール・SNSのやり取り: 勧誘時の説明・契約後の対応の証拠
  • 録音・録画データ: 電話勧誘・訪問販売時の対応の証拠(通話録音は適法)
  • 振込明細・クレジットカード明細: 支払いの証拠
  • 商品・サービスの写真: 受け取った商品・提供されたサービスの証拠
  • 広告・カタログ: 契約締結の前提となった説明の証拠

執筆: sanbonko(行政情報部)

2015年頃から日本の行政処分データや公的制度情報を継続的に収集・分析。14省庁・機関の5,362件の行政処分データセットを運営し、規制動向の調査・分析レポートを公開しています。

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